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KAZUKI ISHIDA
石田 一貴

STAND OFF / CENTER

ここが、スタート地点。

[写真] ボールをキックする石田選手

トップリーグ2021の開幕から、はや2か月。あらためて最高峰のピッチに立てる喜びを思う。感染対策のため入場者数や応援方法が制限されるのはいかにも惜しまれるが、国内のみならず海外の超一流まで加わった強豪クラブがひしめく環境で、存分に走り、当たって、勝利の歓喜や敗戦の悔しさを全身で味わう。それができる者は絶対に幸せだ。

あの舞台で自分も戦いたい。およそトップレベルでのプレーを志す選手なら、そう思うのは自然なことだろう。大学卒業後2年間在籍した清水建設を退社し、2020年の7月に三菱重工相模原ダイナボアーズに加入した石田一貴も、そんなひとりだった。

「清水建設ではフルタイムで仕事をやりながらラグビーをやっていたのですが、同級生がトップリーグで活躍する姿を見て、『負けたくない』『日本代表になりたい』という気持ちがどんどん大きくなっていきました。引退後のことを考えれば正直迷いもありましたが、それよりもやれるところまでやりたいという思いのほうが強かった。もっとラグビーにフォーカスするために、プロになろう、と」

知られざる実力者である。華々しいスポットライトを浴びる機会こそ少なかったものの、所属するチームでは常に確かな実績を残してきた。日体大では1年時から主軸を担い、4年時は主将として、多くの好選手や名指導者を輩出してきた伝統校の先頭に立った。清水建設ブルーシャークスでも、加入2年目の2019シーズンにBKリーダーを務めている。

ここまでのキャリアのハイライトは、2019年3月に世界選抜の一員に選出されたことだ。2017年にスーパーラグビーから除外となったオーストラリアのウェスタン・フォースを支援するために創設された『グローバル・ラピッド・ラグビー』で、フォースとオープニングマッチを戦う世界選抜に名を連ねた。チームメイトには、元ニュージーランド代表のSHアンドリュー・エリスや元南アフリカ代表のFBジオ・アプロンなど、そうそうたる顔ぶれが並んでいた。

「ちょうど清水建設での1年目のシーズンが終わった後で、当時清水建設のヘッドコーチだった黒須夏樹さん(現三菱重工相模原アシスタントコーチ)に、海外留学の相談をしていたんです。夏樹さんは世界選抜の監督のロビー・ディーンズさんとつながりがあって、世界選抜のスタッフにも入っていたので、メンバーに推薦していただいて。招待状が来るまで、信じられませんでした(笑)」

わずかな期間とはいえ、それまでテレビで見ていたトッププレーヤーたちとともにトレーニングに励み、食事をして、ゲームを戦った時間は、ラグビー選手としての本能を揺さぶられるような刺激に満ちていた。そしてこの時を機に、『プロで勝負したい』という思いが、心の中でどんどんふくらんでいった。

「パナソニックの藤田(慶和)さんや平野(翔平)さんたちと一緒に過ごして、プロの環境を初めて体験して、『自分もこのレベルでラグビーをやりたい』と思いました。あの経験が、大きなきっかけでした」

[写真] 円陣を組むダイナボアーズの選手たち

2年目のシーズンを終えた後、清水建設ブルーシャークスを退団。プロ選手としての道を模索していたところに、ダイナボアーズから誘いの声がかかる。そして昨年の夏、待望のトップリーグクラブでのプロ生活が始まった。

「入ってすぐに、『さすがトップリーグのチームだな』と感じました。シンプルに何をとってもレベルが高い。クラブの運営も、アマチュアとプロの違いを感じます。一方で、清水建設の時と比べてチームで一緒にいる時間が長いので、より一体感、ファミリー感もあります」

思う存分ラグビーに没頭できる環境に身を投じて痛感したのは、オンとオフの切り替えの大切さだ。トレーニングとなれば人が変わったように集中する半面、オフの時間はしっかり休んで体と心をリラックスさせる。周囲の選手たちのそうした姿勢を目の当たりにして、プロ選手として生活することの厳しさを実感した。

「午前中にウエートをやって、午後もラグビーの練習があるというのは、最初のうちはしんどかったです。会社での仕事はないにしても、毎日合宿にきているような感覚で大変でした。それでもみんなバンバントレーニングできるのは、体を休める部分でもプロ意識があるから。プロ選手は社員選手に比べて時間があるから楽だと思われるかもしれませんが、1日1日の強度がすごく高いので、そのぶんしっかり休まなければならない。遊んでいられる体ではないんだ、ということを身をもって学びました」

もっとも、それこそがまさに望んでいた環境でもある。入団から9か月あまりが過ぎた今、「プロになって本当によかった」と充実の表情で語る。

[写真] パスを出す石田選手

プレーヤーとしての持ち味は、正確なパスとキックに、流れの中で的確なプレーを選択できる優れた状況判断力。173cm、85kgと決して体は大きくないもののコンタクトは強く、SOからCTB、FBまで高いレベルでこなす万能性も大きな武器だ。学生時代に数か月間オーストラリアのブランビーズに留学した経験があり、外国人選手と臆せずコミュニケーションをとれる点も、トップレベルで戦っていく上で意義のある長所だろう。

雄大な自然の景観で知られる熊本県阿蘇市出身。中学・高校時代は朝5時半の電車に乗って熊本市の中心部に位置する九州学院まで通学し、ラグビー部での練習の後は、コーチでもあった父の車で1時間ほどかけて帰宅していた。「その頃はなんとも思っていませんでしたが、今考えたらよくあんなキツいことをやっていたな、と思います(笑)」。なお、高校、大学と同じ道をたどった2歳下の弟の大河は、現在NTTコミュニケーションズのFBとして活躍している。

「やっぱり意識はします。トップリーグであいつと試合をするのは、ひとつの目標ですね」

チームは1勝1分5敗でリーグ戦を終え、レッドカンファレンス7位でプレーオフトーナメントに進出。リーグ戦では出場機会を得られなかった石田だが、グレッグ・クーパーヘッドコーチをはじめ首脳陣の評価は高く、プレーオフ1回戦のコカ・コーラ戦でついに初先発を果たした。激しい雨が降り続く難しいコンディションながら終始安定したパフォーマンスを発揮し、後半36分にはCTBマイケル・リトルの逆転トライを導くラストパスを放つなど、24-17の勝利に貢献。トップリーグレベルでも十分に力が通用することを証明した。

「心と体はいつでも行ける状態ですし、とにかく早く試合に出たい、出してほしいという気持ちでいっぱいです。プロは試合で活躍してナンボの世界ですし、それができなければ目標である日本代表入りも見えてこない。僕はまだスタート地点に立っただけ。満足はしていません」

まっすぐではない道を歩んでこの場所にたどり着いた。だからこそ、そこで自分が何をしたいのか、何をしなければならないかが明確にわかる。あくなき向上心は、チームを活性化させる貴重なエネルギーになるはずだ。

Published: 2021.04.22
(取材・文:直江光信)

[写真] パスを試みる石田選手

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