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MAKOTO TOSA
土佐 誠

FLANKER / NO.8

もっと上へ。

みんな、ワクワクしている感じです。

[写真] レフェリーと話し込む土佐選手

12年越しの悲願を成し遂げ、トップリーグクラブとして新シーズンのスタートを切ったチームの印象を、キャプテンの土佐誠はそう表現した。国内最高峰の舞台でプレーできることへの期待感と、いくばくかの緊張、そして静かな自信。さまざまな思いと意気込みが、その表情に浮かぶ。

「昨シーズンのファーストミーティングは『今年はいけるのかな…』という感じだったのですが、今季は『どんなことが待っているんだろう』という明るい雰囲気だった。すごくいいことだと思うし、いろいろなことを始めやすいかなと思います」

トップリーグは、昨季まで所属したトップチャレンジリーグよりさらに強度の高い試合が毎週のように続く厳しいコンペティションだ。三菱重工相模原ダイナボアーズが唯一そこで戦った2007-2008シーズンは、1勝も挙げられないまま下部リーグに降格となった。当然ながら今回も、簡単なシーズンには到底ならないだろう。昇格したことで満足して現状にとどまれば、たちまち置き去りにされる。しかし、屈強な心身を誇るスキッパーは、そんな懸念を一蹴する。

「誰ひとり、ぬるい試合がしたかった選手はいません。みんなには、『ダイナボアーズはまだトップリーグで1勝もできていないわけだから、勝ったら歴史に残るし、ひとつの勝ち星に一番飢えているのは僕たちのはずだ』と話をしました。そのハングリーさは他のチームより絶対に上だから、そこだけは忘れないでおこう、と」

[写真] タックルをする土佐選手

3月18日のファーストミーティングの前にグレッグ・クーパーヘッドコーチに呼ばれ、引き続きキャプテンを任せることを告げられた。昨季は絶対に昇格しなければならないという重圧の中での重責だったが、今季はトップリーグクラブのキャプテンとして、今まで以上に多くの視線が集まる中でチームを牽引することになる。その心境の違いを、本人はこう明かす。

「いいプレッシャー、期待をいただいていると感じますし、その期待に応えたいという思いが強くあります。キャプテンについては、みんなの前でしゃべるかしゃべらないかの違いがあるくらいで、あまり意識はしないですね。12シーズンぶりなので多くの方が楽しみにされていると思いますし、神奈川県にただひとつのトップリーグチームになったので、県民のみなさんに応援してもらえるようなラグビーを見せていきたい」

4月1日に発表された今季のコーチングスタッフは昨年とほぼ同じ顔ぶれで、チーム作りの進め方や戦術、戦略も基本的に昨シーズンを踏襲する。目新しさはないものの、同じ体制のもとで、結果を残したプロセスに継続して取り組めることは、大きなメリットとなるだろう。土佐本人も自信を口にする。

「周りから『厳しいよ』という声を聞きますが、僕たちだってヤワな練習をしてきたわけじゃない。トップリーグを戦ってきたチームを倒して昇格したわけですから。もちろん去年と同じことをやればいいということではありませんが、新顔だからと意識せず、自分たちがすべきことをやる。そこは変わりません」

一方で、戦力的には大きな上積みがあった。3月に発表された、25歳の現役オールブラックスのLO/FLジャクソン・ヘモポを含む9人の新加入選手に続いて、4月1日にはPR川俣直樹(前豊田自動織機)とFL武者大輔(前リコー)の入団も発表された。ラグビーワールドカップにも出場した経験豊富なスクラメージャーと、今がまさにプレーヤーとしてのピークにある国内屈指のオープンFLの存在は、単なる戦力増にとどまらない刺激と影響をダイナボアーズにもたらすはずだ。

「すごくいい補強ができたと思います。みんなキャラクターもいいので、楽しみですね。ジャクソンは、僕がNZ留学していた時に、ダニーデンのグリーンアイランドというクラブで一緒にプレーしました。クーパーさんもそこの出身で、ジャクソンは当時ハイランダーズの控えだったので、毎週のように試合に出ていた。思い出深い選手で、さっそく『相模原はどんな街?』と連絡が来ました」

[写真] ロッカールームで気合を入れるダイナボアーズ の選手たち

ラグビーワールドカップが日本で開催されるため、2019-2020シーズンのトップリーグは6月から8月までカップ戦、ワールドカップ後の2020年1月から5月にかけて通常のリーグ戦を行うという変則日程で実施される。5か月の中断期間を挟んだ約1年の長丁場で、後半のリーグ戦で結果を残すために難しい舵取りが求められるが、「カップ戦でもリーグ戦でも、僕たち選手は舞台に上げられたら全力で戦うだけ」と気にする様子はない。

現在のトップリーグは上位と下位の間に大きな壁があり、下位チームは数年おきに昇格と降格を繰り返す傾向が強い。初年度を除く過去15シーズンに下部リーグから昇格した全26ケース中、約3割は1年で降格している。トップリーグで戦い続けるのは、それだけ厳しいということだ。

しかし土佐は、「生き残るためだけのラグビーをするのではなく、これからビッグクラブになっていくような試合をしたい」と決意を語り、将来的に日本を代表するチームになるために必要なことを、こう話す。

「若手の育成、マネジメントやコーチングスタッフと選手のコミュニケーション、地域との関わり、さまざまなことをうまく回していかなければいけない。短期間では結果に表れなくても、小さなところからコツコツやっているチームが、何年か経ってしっかり結果を出していると感じます。そういう面ではダイナボアーズも、これまで地域のバックアップをいただけるような取り組みを積極的にしてきているので。いずれは日本一になり、世界へ打って出られるようなチームになるためには、見てくださる方々に魅力を感じてもらうことが重要。もちろん今季も下位争いに甘んじるつもりはありませんが、順位だけじゃなく、『ダイナボアーズってこんなにいいチームなんだ』と感じてもらえるようなシーズンにしていきたい」

[写真] スクラムをする土佐選手

本拠地である相模原には、短くはない年月をかけて築いてきたかけがえのないファンベースがある。6月23日に始まるトップリーグカップ、そして来年1月からのトップリーグには、きっとこの時を待ちわびた多くの人々がスタンドを埋めるだろう。そうしたサポーターとチームが一体となって厳しい戦いを勝ち抜き、喜びを分かち合いながら、ビッグクラブへの階段を上っていく――。思い描くのは、そんなイメージだ。

「僕たちはもっと強くならなければいけないチーム。ファンの方々の強いバックアップがあることで、さらに上へ行ける。一緒に強くなって、どんどん上を目指していきましょう」

穏やかな口調に固い意志がにじむ。この男が中心に立つことで、自然と人が集まり、まとまる。土佐誠の真骨頂だ。

Published: 2019.05.07
(取材・文:直江光信)

[写真] 円陣の中心で声を掛ける土佐選手